マルチリンガル社長の日々
不尽千言万语

台北の街をぶらぶら歩いていると、懐かしいものを早速見つけた。

このロゴ、まだ使ってたんだ！？

台湾には以前十数回、様々な案件で出張していたが、一番最初に来たのは、忘れもしない今から13年前、渡辺満理奈さんとCMの撮影でロングステイしていた時のことだ。

Touch Your Heartというキャッチコピー含めて、キービジュアルなど数々のクリエーティブは、まさに当時私たちのチームが開発したものだった。

今でこそ台湾は、日本人海外旅行先の人気ランキングで圧倒的な1位になったけど、当時クライアントである、台湾政府観光局としては、実に記念すべき初めての日本向け観光誘致キャンペーンを行った年で、気合の入れようが尋常じゃなかったし、私は私で、駆け出しの営業にもかかわらず大役を任され興奮と緊張に満ちた、それはそれは一冊本になるほど話題の尽きない、思い出深いアカウントだった。

満里奈さんは、知る人ぞ知る台湾通で、イメージキャラクターに選ばれる以前から、すでにプライベートで足しげく通っており、本来なら私たち広告代理店がタレントさんを毎日ご案内しなければならないところを、ご本人お気に入りのふかひれ専門店に連れてって頂いたりしたぐらい、ほんとによくご存じだった。

そして、このモニターをのぞき込んでいる一見ただのおじさん、ではなくて、映画ファンならご存知の方も多いかもですが、台湾の黒澤明といわれている侯孝賢（ホウ・シャオシエン）監督。

日本でも作品を多く紹介されているし、キリンビバレッジ「聞茶」のCM（出演：井上陽水）なんかも記憶に残ってる方がいるでしょう→http://www.youtube.com/watch?v=KPvr5ABn1mo

スローテンポで情緒豊かな映像美が特徴ですが、日本のトップアイドルだろうが何だろうが、監督ご本人が納得するようなものが撮れるまで一切遠慮も妥協もしない。

また、巨匠ともなると、現地のプロダクションやら付き人やらで取り巻きが常に十数人で周りを固めている。

監督のいうことやることすべて正しいんだ！という台湾人クリエーティブチームと、

大事なタレントを守らなきゃいけない日本の某有名タレント事務所と、

そして芸術作品より何より、大規模予算をつぎ込んだのだから自国民に対して説明のつく（メンツの立つ？）「結果」だけを求めるクライアントのお役人。

この三者の間に挟まって、一触即発の撮影現場で全員から一斉に無理な注文を聞き続けてひたすら調整に走る広告代理店。

ね、必死感が出てるでしょ！？（っていうかこのシャツとこの髪形、何！？）

しかし、若っ！

自分も、満理奈さんも。

当たり前だけど、まだ二人ともいろんな意味で若かった時代だ。

その後ご結婚されてお子さんが生まれ、今もなおご活躍されている姿をテレビで拝見するたびに、心から嬉しくなる。

撮影の合間も、地元の子供たちに私の通訳を通じて話しかけたり、気さくである一方で、自分の考えをしっかり持っている方だった。

幸せになる人には、それだけの理由があるのだ。

Because you're worth it!