引き続き、万博に思いを馳せる

一週間の中国出張を終えて、帰り道でいろんなことを思い出しながら考えた。

万博の仕事をしていたとき、アメリカトップ企業とのジョイントプロジェクトでパビリオンを仕切ることになっていたDr. J氏と出会った。上海の有名大学を卒業して外資系流通業界を渡り歩いた後、弱冠37、8歳で国を揚げてのイベントである万博に、これまた国を代表するブランドの上海汽車パビリオンの館長に抜擢された、いかにも中国人エリートの風貌をしていた人物。メガネをかけてアイロンのビシッとかかったYシャツにカジパンでさりげなくセンスのよさをアピール。来日されたときに一度銀座の「銀杏」で鉄板焼きを食べながら家の話になったが、なんと、J氏は自宅の庭が「カレサンスイ」と言い出したので、びっくりして「カレサンスイって日本の枯山水ですか?」と聞きなおしたところ、そうだよ。と涼しい顔をして、京都から特別に石を取り寄せてね、とさわやかな笑みで答えた。今でも記憶に新しいのは、初めて会った日に、握手を交わしたのだが、片手を差し伸べてきたJ氏に私は両手で応じたときに、一瞬目の奥に光るものを見た。数日後再会した普通の会議の席で、両手で握り返してきたのだ。その後毎週のように打ち合わせをしたりいろんな場面で遭遇しても、そのことについでお互い一度も触れたことがないが、おそらく彼のエリート人生においても、両手で握手されたのは初めてで、そしてそこで何かを感じたに違いない。そんなJ氏の、人としての暖かさや、そして一種エリートならではの賢さを、私は悟ったのだ。

そういえば、ある先輩から先日、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画の話を聞いた。私はSFとマイケル.J.フォックスのどっちにも興味がなく、名前くらいしか知らなかったが、その中の一つのエピソードとして、主人公の二人が日本製をめぐるやり取りがたいへん感慨深かった。壊れた機械を前に、「やっぱりな、日本製(だからダメなんだ)」と言ったのに対し、もう一人が「日本製は最高さ」と言い、前者が「信じられない」と返しているそうだ。これは、1955年と1985年とでは、日本製品の質(イメージ)が大きく異なることを意味している。いつの間にか先進国の仲間入りを果たした今の日本には、Made-in-Japanがそんな風にバカにされていた時代があったことすら知らない子供と、そんな都合の悪いことをすっかり忘れている大人だけしかいないとすると、何かとまずいことになるのではと思いながら・・・

中国に対しても何かわかりやすい事件が起きるたびに「だからMade-in-Chinaは!」というような文脈で語られることの多い日中ビジネスだが、だれでも発展途上の時代があり、それがイコール進化していく過程なんだ、と視点を変えれば、きっとより前向きな結果が生まれるのではないだろうか。大事なのは、いち早くリーダーになる素質を持った人間をしっかりみつけ、お互いに学びながら成長していくことではないだろうか。万博開催直前でも日本のマスコミで面白おかしく報道されていたようだが、パジャマで町に出かけようが、上半身裸でうろうろしようが、マナーの問題といえば問題だし、そんなことに目くじらを立てている暇があったら、そういう人たちもエネルギッシュに生きているという国の、13億人のパワーをまずは、うまく受け止めて自分のものにしたもん勝ちだと思いませんか。

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